今、マンションでは二つの高齢化が急速に進んでいます。一つは居住者の高齢化、もう一つは建物の高齢化です。築年数が経過した高経年マンションは、今後さらに急増すると見込まれています。分譲マンションは、近年も年10万戸超のペースで増え、全国のストック戸数は2020年末時点で約675.3万戸に上っています。老朽化の心配があるマンションも増えています。国土交通省の推計では、2020年に103.3万戸ある築40年を超すマンションの数は、20年後には4倍近い404.6万戸に達します。
2018年度の国土交通省の調査によれば、マンションの世帯主は、60代以上がほぼ半数を占めています。1980年代までに完成した高経年マンションに限れば、4分の3以上が60代以上です。マンションで暮らす認知症の人も増加しています。2025年には、日本の認知症高齢者は約700万人に達すると見込まれており、マンションの管理組合や管理会社、そして住民同士で、どう認知症と向き合うかが問われています。
大規模修繕に向けた修繕積立金が計画に比べて不足しているマンションが既に34.8%もあります。資材の値上がりや人手不足で、修繕費用はさらに高騰していく懸念もあります。近所づきあいの煩わしさを避けようと、戸建てではなくマンションを選んだ人もいます。しかし、孤立を防ぎ、災害に備えるためにも、他の世代との交流を進め、持続可能なコミュニティーを作ることが重要になります。
(2022年4月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)