急激な円安の進行

3月以降に加速した円安の流れが止まらず、円は4月13日に一時1ドル=126円台まで下落し、約20年ぶりの安値をつけています。円が売られる勢いは、他の国の通貨と比べても突出しており、日本経済の力が失われつつあるという根本的な問題もありそうです。
最近の急速な円安は、米国が3月に利上げを決めたことが直接の引き金です。同時期の欧州のユーロの下落率は3.4%、英国のポンドは2.5%で、円の半分以下です。円の下落率に近いのは、ロシアの通貨ルーブルで、年初から9.8%下落しています。ウクライナへの侵攻後、異例の経済制裁を受けているロシアの通貨と並ぶほどに、円が売られるという事態となっています。
円安になると、日本からの輸出が有利になり、海外投資からの利益も円建てでは膨らみます。しかし、輸入品は割高になります。特に、日本が海外に頼るエネルギーや食料品、原材料は、そもそもの国際価格が急上昇しており、その影響が増幅されています。賃上げが不十分なまま必需品が大きく値上がりすれば、家計にはマイナスとなります。
ウクライナ情勢の悪化を受けた原油などの資源高もあり、貿易赤字が続いています。輸入するのに必要なドルの需要が高まり、円安が進む一因となっています。資源の輸出国として、ブラジルの通貨レアルが高騰しているのと、全く逆の構図になっています。力強い需要回復が続く米国と比べ、日本経済はコロナ禍からの浮上が遅れ、賃上げもまだ鈍いままです。エネルギーなどの高騰は、景気を腰折れさせる要因にもなります。

(2022年4月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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