OECDの2017年の調査によれば、児童手当や保育サービス、育児休業手当などへの日本の公的支出は、国内総生産(GDP)比で1.6%でした。少子化対策が進んでいるとされるスウェーデンの3.4%やフランスの2.9%と比べると、半分程度の低水準です。先進国38カ国中、日本は上から29番目という低さです。韓国の1.1%よりは高いものの、OECDの平均値2.1%を下回っています。
子ども政策の充実には安定財源が必要となります。こども家庭庁は、ワイズペンディング(賢い支出)を意識しながら、実効性を伴う施策を打ち出すことにより、予算の増額を目指すことが大切です。日本は児童手当などの現金支出が少ないとの指摘もあります。2020年の支出のうち、およそ7割が保育園の拡充などの現物給付で、3割が現金給付とされています。同じ基準で計算すると、フランスはほぼ半分ずつ、英国では6割以上が現金給付です。
出生意欲の引き上げ効果については、児童手当の増額は、幼児教育の無償化や育休期間の延長よりも上だとされています。日本は待機児童の解消が政治課題となり、保育園整備などの予算確保を急いだ事情があります。施設の拡充を終えた後は、現金給付の引き上げも選択肢となります。
(2022年4月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)