少子化への危機感の共有

子どもの減少に、歯止めがかかっていません。厚生労働省の人口動態統計速報によると、2021年に生まれた赤ちゃんの数は約84万人で、過去最少を記録しています。2020年より約3万人、率にして3.4%減っています。速報値には、日本に住む外国人などが含まれており、日本に住む日本人は80万~81万人程度とみられ、80万台割れは避けられたもようですが、減少傾向は明白です。急速な少子化は、社会、経済の活力を奪い、社会保障制度の維持を危うくします。政府と自治体、経済界は、このわが国の人口危機を直視し、子どもを持ちたいという若い世代の思いに応える対策を急がなければなりません。
2022年4月からは、相次いで制度が見直されています。男性の育休を後押しするための改正育児・介護休業法が段階的に施行され、不妊治療への保険適用も大きく広がります。政府は子どもに関する政策の司令塔となるこども家庭庁を来年4月に発足させる方針です。子ども問題は、虐待やいじめ、不登校、自殺が大幅増加するなど子どもを巡る環境は厳しさを増しています。こども家庭庁が、子どもや家族、家庭を守る要の組織となるべきは言うまでもありません。
新しく創設されるこども家庭庁が、情報を所管横断的に集約・分析し、強い総合調整機能を持ちながら、子ども達の様々な課題解決に当たることが期待されています。そのためには、こども家庭庁の創設を中央省庁の再編にとどまらず、自治体での組織の再編につなげる必要があります。幼稚園・保育所・公立小中学校は市区町村、高校は都道府県が設置主体となっています。このため中央省庁のみが縦割りを廃しても、それが自治体にまで浸透しなければ意味がありません。このため中央省庁と同様に、自治体内の縦割りも廃することができるかがカギとなります。
子ども問題の背景には、深刻化する少子化問題が密接に関与しています。あまりに急速な少子化は、現在の若者世代、さらにこれから生まれてくる子どもたちの負担を過大にし、医療や社会保障など社会システムの根幹を危うくしかねません。少子化対策に、特効薬はありません。多角的に取り組み、ひとつひとつ実効性を高めるしかなく、高齢者の社会保障を効率化しながら、子どものための予算を確保することも重要になります。
子ども・子育て世帯等への支出を拡大する観点から、応能負担を中心に財源を確保しつつ、必要な支援策を講じ、諸外国比でみても遜色ない水準に引き上げるとともに、より効果的な支出に振り向けていくべきです。長期的には、歳入改革を通じて十分な財源を確保しつつ、子ども・子育て世帯に重点を置いて支援していくべきです。こども家庭庁において、少子化対策が重要な責務であることを忘れてはなりません。

(吉村 やすのり)

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