職場での心理的安全性を確保のために

心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態を言います。エドモントンが1999年に提唱した心理学用語です。チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態を言います。心理的安全性は、米グーグルが社内で最もパフォーマンスの高いチームの特性の筆頭に挙げたこともあり、それ以降特に注目が集まっています。
人材サービス大手のエン・ジャパンの調査によれば、職場のどこに心理的安全性を感じるかという質問では、他愛のない雑談ができるが75%で首位です。心身の状態を配慮し合えるが28%、人格や発言をむげに否定されないが27%などの回答も目立っています。
遠慮は不要で安心感がある職場で仕事に取り組む社員は、今後のキャリアを考えて自ら切りひらいていくキャリア自律の意識も高まるとされています。パーソル総合研究所のキャリア自律に関する調査によれば、当てはまるを5、当てはまらないを1とした場合の平均点で、自律度が高い層の仕事のパフォーマンスは3.76と、自律度が低い層より0.62ポイント高くなっています。主体的に仕事に向き合っていると、パフォーマンスにも影響します。仕事への貢献意欲を示すワーク・エンゲージメントなども、自律度が高い層が上回っています。企業にも働く本人にとっても利点が大きいと言えます。
キャリア自律を促すには、心理的安全性に代表されるような企業風土づくりに加え、他社留学のような越境学習の機会創出や社内公募による異動など複合的な取り組みが不可欠です。単発の施策や啓発でだけでなく、組織全体の環境づくりが求められます。生産性が高い組織に共通するといわれる心理的安全性を確保し、社員自身がキャリア目標をどう達成していくかを客観的に評価することが大切です。

(2022年4月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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