第6波の原因となった新型コロナウイルス変異株のオミクロン株は、感染力は強いのですが、病原性は強くなく私権を制限するほどのリスクの高いウイルスとは思えません。重症化の危険が大きいのは、65歳以上の高齢者と基礎疾患がある人で、感染しても大部分は無症状か軽症です。感染力が強いとされる新たな系統XEによって第7波が懸念されていますが、オミクロン株と特性は同じと思われます。
第6波では、ワクチン未接種の子どもたちに感染が広がり、学級閉鎖や休校が相次ぎましたが、子どもたちはほぼ重症化していません。現在の新型コロナ対策は、多くの子ども・若者の教育や交流の場を奪い、人生にマイナスの影響を与えています。この2年間で結婚件数は11万件も減ってしまいました。結婚数が減れば、未来の子どもの数も減ってしまいます。
飲食店の営業時間などを制限する感染対策も、あまり効果があったとは思えません。重点措置の前から客は減っており、協力金を支払って時短を要請しても、感染抑制効果は小さく、かえって売り上げが減った飲食店への所得補償になってしまっています。打撃を受けた産業が多くある中、飲食店だけに協力金を支払う合理性は乏しいと思われます。欧米では行動規制の悪影響を懸念し、オミクロン株の流行下では規制を緩める動きが広がっています。日本政府もそうした動きに続くべきです。
今年に入っても重点措置が適用されてきた背景には、強めの感染対策が国民から支持されたことがあります。わが国の新型コロナによる感染者数や死亡者数は、欧米の先進国より圧倒的に少ないにもかかわらず、わが国の感染対策の問題点ばかりが指摘されていた報道姿勢にも偏りがあったのではないでしょうか。
新型コロナは感染症法上の分類で、上から2番目に危険度の高い2類相当の措置が取られ、保健所が無症状を含めた全感染者数を把握する義務が生じ、その数字だけが毎日更新され強調されてきました。コロナ関連死の主因の半分近くが、老衰や誤嚥性肺炎などの新型コロナ以外の疾患であることは明らかです。コロナ関連死が、コロナで療養開始後10日間以内に亡くなった全ての人が対象となっています。
新型コロナに関する情報やエビデンスが蓄積されてきた現在、新型コロナの感染症法上の分類は、季節性インフルエンザと同じ5類相当に変えることを考えるべき時期にきています。2類相当では、特定の医療機関にしか患者を入院させられないため、病床不足が起きやすく、入院先の調整や感染者数の把握などで保健所の負担は重くなります。濃厚接触者の自宅待機など、周囲への影響も大きいものがあります。5類相当とすれば、入院先が広がって病床不足が解消され、保健所の負担も大幅に軽減されます。介護やリハビリを必要とする高齢者の治療もより適切な場所で行えるようになります。しかし、ウイルスが、将来どのように変異するかは分からないので、重症化リスクの程度など、変異株のタイプに応じ、感染症法の分類を弾力的に変更する仕組みを作ることも大切です。
(2022年5月5日 読売新聞)
(吉村 やすのり)