大学発の海外特許出願

世界知的所有権機関の集計によれば、特許協力条約に基づく2020年の各国の海外特許出願のうち、大学が占める割合が日本は2.3%でした。シンガポールの13.7%や米国の8.0%、韓国の7.6%に及びません。海外への特許出願は資金面で負担が重く、断念する大学が多くなっています。2020年の大学からの海外特許出願で、最も多かったのは米カリフォルニア大学の600件弱です。東京大学の149件や大阪大学の128件など日本の大学との差は歴然です。
特許庁は、2022年度に事業化を前提とした大学の海外への特許出願に補助金を新設するなど、支援を強めることにしています。国内の大学による海外特許出願の後押しを通じて、将来の大学発スタートアップの企業価値向上を狙っています。海外出願総数に占める大学の割合が、他の主要国に比べて日本は低水準にとどまっている現状があります。
特許庁が新たに設ける補助金は、大学や公的機関を対象とします。スタートアップ企業の立ち上げなどを前提とし、海外特許出願にかかる手数料や翻訳といった費用を最大で半額補助します。今夏にも公募を始め、100件程度を選定する予定です。日本の特許庁で出願すれば、他国で出願していなくても技術は国内外に公開され、誰でも閲覧できます。海外への特許出願は、商品化が確定していない新技術でも世界的に保険をかけられる利点があります。

(2022年5月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。