自民党の議員連盟は、出産にかかる費用が高額になっているとして、出産育児一時金を現在の42万円から40万円台半ばに増やす提言書を岸田文雄首相に提出しました。出産費用は増加傾向で、都市部では自己負担が数十万円に上ることもあります。議連は、少子化の主要因の一つは経済的負担であり、一時金を最低でも、基礎的な費用の上昇に見合う水準まで引き上げるべきだとしています。
一時金は、負担を軽くするために健康保険などから支給される制度です。2009年に38万円から42万円に増額しましたが、その後、医療機関側が出産費用を増やし、平均額で一時金を上回る状態が続いています。議連は、一時金増額のほか、基礎的な出産費用とそれ以外の料金を分かりやすく表示する費用の見える化を求めています。
2019年度の厚生労働省の調査によれば、公的病院で最低限必要な出産費用は平均44万4千円で、2012年度から1割増えています。都市部で高騰が目立ち、最も高い東京都の平均53万7千円に対し、最も低い鳥取県は平均34万1千円です。民間団体の調査では、61万円以上かかった人が半数近くを占めたというデータもあります。
出産は、原則公的保険の適用外です。帝王切開など治療を伴う出産は保険が適用されますが、通常の分娩は保険の適用外となっていて、全額自分で支払う必要があります。現在、健康保険組合や自営業者らの国民健康保険から、原則42万円の出産育児一時金が支払われています。その差額が自己負担額となります。
(2022年5月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)