労働移動の促進

わが国の労働生産性を上げるためには、成熟した産業から今後の成長が見込まれる分野に労働力を移す労働移動が必要となります。政府は働き手が将来のキャリアについて相談できる場を充実させるなど、教育訓練への投資を強化しています。成長分野への労働移動は、安倍政権も成長戦略に掲げ、目玉策として企業が人材会社に再就職支援を委託する労働移動支援助成金を2014年度から大幅に拡充しました。
労働移動を促進するためには、人材投資が不可欠です。日本企業が通常業務を離れて行う研修などの費用は、対国内総生産(GDP)比で0.1%にとどまり、他の先進国に比べて見劣りしています。働き手個人が自分のやりたいことを考え、10年先、20年先に向けたステップアップをできるようにすることが必要です。働き手が社外の専門家に相談する際に補助を出すことなどが想定されます。日本の企業は働きながらの訓練が中心で、専門知識を別途学ぶ機会は限られています。
成長分野への労働移動を進める観点では、厚生労働省が定める副業・兼業の促進に関するガイドライン(指針)の改定も必要になってきます。副業を通じて段階的に起業した方が成功につながりやすく、企業側にも人材不足を解消できるといったメリットがあります。しかし、企業規模が大きくなるほど、副業に慎重な企業が多くなっています。

(2022年5月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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