女性取締役選任の必要性

6月の株主総会シーズンを控え、資産運用会社が女性取締役ゼロの投資先企業に対し、総会議案に反対する動きが広がってきています。企業に取締役会の多様性を求める動きは、海外投資家が先行してきました。米議決権行使助言会社のグラスルイスは、年々基準を厳しくしており、現在は全ての上場企業について多様な性別の取締役がゼロの場合にトップ選任に反対推奨しています。
女性取締役の登用は、大手企業で進むものの、上場企業全体ではなお道半ばです。三井住友信託銀行らの調査によれば、上場企業970社において、2021年度に女性取締役が不在の企業は51%に上っています。投資家の要請は来年以降も強まる見通しです。
これまで海外運用会社が先行してきましたが、国内勢でもアセットマネジメントOneや三井住友トラスト・アセットマネジメントが議決権行使基準に盛り込んでいます。女性取締役がゼロの場合に経営トップの選任に反対するとしています。
課題は女性人材の育成です。1986年の男女機会均等法施行から30年以上過ぎたものの、企業の社内で取締役候補となる女性人材はなお乏しいままです。現在は女性の弁護士や大学教授などを、社外取締役として迎え入れる例が目立っています。
6月総会では、ESGについても投資家の監視の目が厳しくなります。温暖化ガス排出量が多い企業に対し、気候変動による財務影響に関する開示が不十分な場合や温暖化ガス排出量の削減がみられない場合、取締役選任議決案に反対する運用会社が増えてきています。ESGで課題を抱える企業では、改善がみられない場合などに代表取締役の選任に反対するとしています。企業統治における取締役の多様性やESG対応は、息の長いテーマとなりそうです。

 

(2022年5月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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