団塊の世代の全員が75歳以上になる2025年以降は医療費の膨張が加速します。政府の推計によれば、2040年の医療給付費は68.5兆円と2020年度の約1.7倍に増える一方、20~64歳の現役人口は2割近くも減ってしまいます。
高齢者の医療費の窓口負担は、70~74歳は2割、75歳以上は1割が原則ですが、今後は現役世代と同様に3割負担を原則とすることも必要になってくると思われます。その上で年齢に関係なく、所得や資産の状況から支援が要る人だけ、負担割合を1~2割に下げるような負担の全世代型改革を進める必要があります。
日本の医療が少子高齢化を乗り越えるには、負担と給付の発想を転換する必要があります。今は有効性と安全性が確認された治療法や医薬品は、全て公的保険でカバーしています。今後は、医療上の有用性などの視点で保険適用の可否を判断すべきです。
治療法の評価も見直しが要ります。同じ病気でも特別な治療法を選択した患者には、追加的な自己負担を求める考え方も検討すべきです。保険診療と保険外診療を併用する混合診療を禁止するルールは見直し、柔軟に併用できるようにすべきです。国民皆保険を守るためにも聖域を廃した改革が必要となります。
(2022年6月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)