少子化が加速しています。厚生労働省が公表した2021年の人口動態統計では、日本人の出生数が約81万人となり、過去最少を更新しています。国の将来推計人口よりも6~7年早いペースです。
人口動態統計によれば、2021年の出生数は、前年比3.5%減の81万1,604人です。1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値である合計特殊出生率も、0.03ポイント減の1.30と過去4番目に低い水準でした。2021年は、15~49歳の女性が前年より約44万人も減少していたところに、コロナ禍による出産・婚姻控えが加わり、少子化を加速させています。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した将来推計人口では、最も実現の可能性が高いとされる中位推計で、2021年の出生数は約86万9,000人としていました。しかし現実には、5万人以上も下回っていました。出生数は2027年に81万4,000人、2028年に80万9,000人と推計されており、少子化の進行が想定より6~7年早く進んでいます。今年度中にも公表される予定の新たな将来推計人口では、2020年の国勢調査のほか、最新の出生率の動向などを踏まえ、出生数が下方修正されると思われます。
政府も少子化対策に手をこまねいていたわけではありません。フランスやスウェーデンなど、出生率が低下後に上昇した国の施策を参考に、就労と子育ての両立支援を進めてきました。保育施設を増やし、育児休業も取得しやすくしています。幼児教育・保育、高等教育の無償化や奨学金の拡充など教育にかかる費用の軽減を図ってきましたが、少子化に歯止めがかかっていません。これまで支援が手薄だった非正規雇用や専業主婦など、幅広い人の結婚や出産を後押しする施策に力を入れる必要があります。特に、拡充が進まなかった現金給付を増やすべきだと思われます。
(2022年6月25日 読売新聞)
(吉村 やすのり)