内閣府の調査によれば、55~69歳の男性の6割、女性の5割が、70歳の時に働いていることが理想と答えています。しかし、現時点では働き続けられるのは、65歳までなどに限られます。ハローワークが紹介している仕事も、60歳を過ぎると他の年代に比べできる範囲は小さくなります。経済的な理由だけでなく、自己実現をかなえるための起業は一つの選択肢になり得ます。
起業する上で必要なものが開業資金です。自宅の空いたスペースを使うような小規模な起業であれば貯蓄などでまかなうこともできますが、新しく仕事場を持つのであれば、融資や補助金を活用することが必要になります。日本金融政策公庫は、55歳以上を対象に特別利率で開業資金を融資しています。7,200万円を上限に、事業開始時やその後に必要になる設備資金などとして利用できます。融資後に利益率などに関する一定の目標に達すれば、利率を0.2%引き下げる目標達成型金利もあります。内閣府は、都道府県を通じ東京圏以外の地域などへの移住や起業に支援金を出しています。起業の場合は、最大200万円の補助金が受けられます。
純粋に収入源を確保するためだけに起業することはおすすめできません。会社を経営して従業員を抱えることにはリスクが伴います。規模が大きくなればなるほど、個人情報保護やコンプライアンスなど学ばなければいけないことも多くなります。自分がやりがいを感じられることの実現を一番の目的にしたほうがいいと思われます。
(2022年6月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)