人工知能(AI)を活用したスタートアップの診察支援サービスが、活躍の裾野を広げています。最近はエンジニアがAIの設計図をプログラム共有サイトに公表する流れが定着し、AI開発のハードルが下がってきています。さらに医師が画像データを組み合わせ、対応部位を肺や大腸以外にも広げています。富士経済の調査によれば、AIを使った診察支援システムの国内市場は、2035年に約560億円と2021年の約28倍に拡大するとされています。
アイリスのシステムnodoca(ノドカ)は、インフルエンザの診察を支援します。専用カメラで咽頭を撮影し、インフルエンザ濾胞を呼ばれる腫れ物をAIが探します。慶應義塾大学発のOUI Inc.は、白内障の診察を支援するAIアプリを薬事申請します。スマートフォンのカメラ部分に独自開発したレンズを取り付けた上で、眼球撮影し、その動画から白内障の進行具合を4段階で判定します。
アナウトは、腹腔鏡手術の支援ロボットであるダビンチと連動するAIも計画中です。地方では勤務条件の良い診療科に志望者が集中し、激務のイメージが強い外科などは敬遠される傾向にあります。医療の質を維持するためにもAI開発は喫緊の課題となっています。国内で医師の偏在問題が深刻化するなか、専門医が不足する過疎地域の医療現場を、AI診療が技術で下支えすると期待されています。
(2022年6月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)