政府による2020年時点の推計によれば、65歳以上で認知症の人は約602万人とされています。高齢者の約6人に1人が認知症という計算になります。
認知症の中で最も多いアルツハイマー型の患者数は、65歳以上の人口のおよそ1割にあたる約360万人と推計されています。在宅で認知症の人を家族が介護した時間を計算すると、介護に要する時間は1週間あたり16.6時間(1日2.4時間)かかります。これを介護従事者の賃金などにあてはめて、1年間にかかる金額を算出すると約6兆7,718億円に上ることになります。医療費1兆734億円、公的な介護サービス費用4兆7,832億円を合わせると、全体の費用は計12兆6,283億円にもなります。これは認知症の人1人あたりで、年間約350万円がかかる計算になります。
認知症の人を家族が介護したとすると、家族が仕事を休んだりすることによる労働生産性の損失は約9,680億円、長期介護で離職すると約2,535億円にも達します。日本の家族全体の損失は、計約1兆5,470億円にも及ぶことになります。団塊世代が全員75歳以上になる2025年には、高齢者の約5人に1人にあたる約675万人が認知症になると見込まれます。今後、高齢者人口が増加していくため、医療や介護といった社会保障費と家族介護による社会的コストはさらに膨らむことになります。
(2022年7月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)