17の国と地域に、子世代は親世代より経済的に豊かになるかと尋ねると、日本は最も将来に悲観的で、8割近い人が厳しくなると答えています。最大の要因の一つは少子高齢化です。増え続ける高齢者を、減り続ける現役世代が支えなければなりません。年金の目減りを見越し、家計は消費や投資をおさえ、貯蓄にまわすことになります。国内の市場拡大は見込めず、企業も投資を控えることになります。全てが内向き志向となっています。
バブル崩壊後の長期不況に苦しんだロストジェネレーションと呼ばれる世代が、就職や結婚といったライフイベントを迎える時期に、バブル崩壊後の不況が重なりました。結婚や出産はあくまでも個人の選択であり、多様な方が望ましいのですが、当時の不安定な就業や失業を理由に、結婚や出産を望んでいたのにできなかった人は少なくありませんでした。こうした構造的な困窮を自己責任と放置したために、少子化と人口減が後戻りできない状態になり、経済の停滞を招きました。
社会が人々の暮らしに対し、公正に配慮するという期待や安心感があるからこそ、人々は安心して家族を作り、消費することもできます。格差や不公平さを解消した方が、長い目で見るとこの社会を豊かにするということの認識が必要です。目先の安心感や景気ではなく、100~200年先を見通して、あえて青臭く理想の社会を描くことが今こそ必要です。
近年、急速に広がったSDGs(持続可能な開発目標)は、将来を考えないと現在の競争に勝てないように、ルールを変えた点が優れています。現役世代が将来世代の財や資源を一方的に奪う状態から、脱する可能性を感じます。世代を超えて機能するルールやシステムを作るのが政治の役割です。
(2022年7月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)