思春期不器用は、身長が急速に伸びる成長スパート期に身体のバランスがとりにくくなったり、動きがぎこちなくなったりする現象です。海外では、1930年代から様々な調査・研究が行われてきています。日本でもジュニア時代からのトップ選手育成が盛んになり、関心が高まりつつあります。
原因として、体の急速な発達に感覚器の適応が追いつかない、骨が伸びることで柔軟性が低下するとされています。成長スパート期に運動能力が停滞することが確認されています。
運動能力の伸び悩みが成長スパート期と重なっている場合、思春期不器用の可能性があります。この場合に負荷が強すぎるトレーニングをすると、まだ未熟な骨や関節を負傷する恐れが強まります。運動量や時間を増やしたり、強度を高めたりするのは禁物です。
思春期不器用は、成長スパート期が終われば自然と解消されます。思春期不器用の子どもがいる可能性も踏まえて、部活動やスポーツ少年団では発育状況に応じ、全体練習に加え個別のトレーニングメニューを取り入れる必要があります。思春期の子どもたちは、スポーツ中の外傷・障害が多い傾向があります。中には長期的に競技に支障をきたすケースもあります。生涯にわたりスポーツを楽しむためにも、スポーツ指導者に思春期不器用への対応が要求されます。
(2022年7月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)