東京地裁は、文部科学省の私立大学支援事業で東京医科大に便宜を図る見返りに、同大の入試で次男を合格させてもらったとして、文部科学省元局長に有罪判決を言い渡しました。入試の公平性をないがしろにし、職務の公正さや信頼を害したと指摘しています。この事件は、当時複数の大学の医学部で行われていた浪人生や女子学生を不利に扱う入試の実態が明るみに出るきっかけとなりました。事件の舞台となった東京医科大は、遅くとも2006年度から性別や浪人の回数によって点数を操作していたことが判明しています。
文部科学省は全国の医学部の調査に乗り出し、東京医科大のほか、順天堂大や昭和大など計10大学で不適切な入試が確認されたとしています。追加合格などの対応も取られましたが、当時の受験生らが差別的な取り扱いで精神的な苦痛を受けたなどとして、大学側に賠償を求めて提訴する動きが拡大しました。東京医科大学のほか、昭和大学や聖マリアンナ医科大学などに対する集団提訴が続いています。2022年5月に東京地裁が順天堂大学に対し、医学部で不合格となった元受験生の女性13人に、計約805万円の支払いを命じる判決を言い渡しています。
医学部入試の不適性に対する問題提起はあって然るべきです。文部科学省によれば、2021年度入試で医学部医学科を受験した女性の平均合格率は13.60%で、男性の13.51%を初めて上回っています。医学部の男女の合格率の差も事件後に縮まってきています。文部科学省は、10大学における不適切入試はいずれも改善されたとしています。こうした男女間ならびに現役・浪人間での差別は厳に戒むべきことであり、司法の場での救済が進むことが期待されます。
(2022年7月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)