少子高齢化社会への不安

5月にまとめられた全世代型社会保障構築会議の議論においては、高齢者中心の給付を見直し、子育て・若者世代への支援を未来への投資と位置づけ、高齢者人口がピークとなる2040年を目指した社会保障ビジョンを描くとしています。主要な柱として仕事と子育ての両立、働き方に中立な勤労者皆保険、かかりつけ医などの地域医療構想を挙げています。
しかし、高齢化社会での人々の最大の不安は、社会保障制度が今後も維持可能かどうかにあります。高齢者の高齢化の進展で、65歳以上人口が全体の4割弱となり、その中で75歳以上が過半を占めることになります。負担の配分を議論しないことは、社会保障費用の後世代への負担の先送りという未来への負債を放置することになります。
主要先進国の年金の受給開始年齢が67~68歳に対し、平均寿命がトップクラスの日本は65歳で放置されたままです。日本でも高齢者の定義を75歳以上とすれば、高齢者比率はピーク時にも25%にとどまります。元気な高齢者が税金や保険料を負担して、弱った高齢者を支える側に回ることが、活力ある高齢化社会の基本となります。豊かな高齢者から、貧しい高齢者への同一世代内の所得再分配を強化し、後世代の負担を減らす工夫も必要です。
持続的な出生率の低下に対する政府の危機感は、乏しいと言わざるを得ません。2023年発足のこども家庭庁は、事実上虐待防止などの執行機関にとどまっています。少子化対策の総合調整を担う本丸となるには、子どもを作るため、子育て支援のための独自財源を持つ必要があります。学童保育も含めた長期間、全ての国民を対象とした子育て支援の仕組みが必要です。

(2022年7月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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