学校で教員不足が問題になるなか、教えるのに必要な教員免許状の授与件数が大きく減っています。文部科学省の発表によれば、2020年度は計19万6,357件で、データのある2003年度以降では、初めて20万件を切り最少となっています。特に中学校や高校の落ち込みが激しくなっています。過労死ラインを超える教員の長時間労働の実態が広く知られ、教職が敬遠されています。中央教育審議会の部会では、免許件数の減少に歯止めをかけるため、教職課程の履修負担を軽減する案が議論されています。
教員免許は教職課程のある大学などで単位を履修し申請すると、都道府県教育委員会から授与されます。小学校は、主に教員を目指す人が通う教育学部などでしか免許が取れないのに対し、中高は理工学部や文学部などでも取得できるため、その時の教職の人気や、民間企業の採用状況に左右されやすい傾向があります。
公立学校の教員採用試験の受験者数は、減少傾向にあります。免許授与件数が大きく減ったことが、受験者の減少につながっています。中学校教諭の約6割の時間外労働が、月80時間の過労死ラインを超えていたことが広く知られています。受験者数の減少は、教員不足のみならず、教育の質の低下につながります。教職員の労働時間を始めとする待遇改善が急務です。
(2022年8月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)