臓器移植を巡っては、国内のドナー不足が大きな問題となっています。腎臓の場合、糖尿病の増加などで人工透析を受ける患者が増え続けています。親族間などの生体移植を除けば、国内での腎移植は平均で約14年待ちです。
国内では、1980年代は健康な親族から二つある腎臓の一つをもらう生体腎移植が、移植医療の主体でした。日本移植学会によれば、1990年代には生体腎移植が年間400件前後、死者からの腎移植が年間150~200件程度行われていました。糖尿病患者の増加などで、1990年代半ばには、人工透析を受ける人が全国で15万人を超えています。移植希望者も1万人を上回り、ドナー不足が深刻化しています。
臓器移植法が1997年に施行されましたが、脳死下での臓器提供は、その後の10年間でわずか約60件に過ぎません。国は2010年に同法を改正し、本人の意思が不明な場合や15歳未満の子どもでも、家族の承諾があれば臓器提供を可能としました。また、運転免許証で意思表示できるようにしたり、啓発活動に力を入れたりしてドナーの確保を進めています。こうした施策により、2019年には、脳死下の臓器提供数が年間97件にまで増えています。
日本臓器移植ネットワークによれば、移植希望者は今年6月末時点で心臓921人、肺507人、腎臓1万3,589人に達します。しかし、2021年度に国内で行われた移植は心臓69件、肺83件、腎臓148件(いずれも脳死を含む死体移植)に過ぎません。移植までの平均待機期間は心臓の約3年、肺の約2年半に対し、腎臓は約14年9か月に及んでいます。
世界的に見ても、日本のドナー確保は遅れています。人口100万人あたりのドナー数は、日本は0.61人で、米国の38.03人、スペインの37.4人、韓国の9.22人などに大きく水をあけられています。
(2022年8月7日 読売新聞)
(吉村 やすのり)