国連の推計によれば、世界人口の年間増加率が、統計を遡れる1950年以降で初めて1%を割り込み最低となっています。人口規模が世界最大の中国も長年の一人っ子政策などが響いて、2022年から人口減に転じ、2023年にはインドと逆転します。人類史でも特異な20世紀の経済成長を支えてきた人口爆発は、近く終わりを迎えることになります。世界的な少子高齢化や新型コロナウイルスの影響で、世界人口の増加率は2020年に初めて1%を割り込み、2022年は0.83%まで落ち込んでいます。
産業革命を経て世界人口は、1900年の16.5億人から100年間で約4倍に急増し、20世紀の繁栄の基盤となりました。2022年11月15日に80億人に達すると国連は予測していますが、2086年に104億人でピークを迎えます。3年前の推計では、ピークは2100年の109億人としていましたが、大幅に前倒ししました。
世界の人口地図は今後100年で大きく変化します。経済発展を遂げてきた中国など東・東南アジア地域の人口が、2030年代半ばに減少に転じると予測されています。今後台頭するのはアフリカで、2050年には世界人口の3割に達します。豊富な若年人口を労働力に生かせれば、世界経済のけん引役になりえますが、実現には腐敗や貧困など課題も山積です。
これまでは主要な働き手である生産年齢人口(15~64歳)の比率が高い人口ボーナスが、経済成長の重要な源泉でしたが、急速な少子高齢化で好循環は幕を下ろそうとしています。今後は少ない働き手が多くの高齢者を支える人工オーナスという逆風下にある国が増え、これまでのような経済発展を続けるのは難しくなってきます。自動化やAIの活用などで生産性を高め、人口増に頼らない成長モデルを示した国が国際社会の新しい主役になります。
(2022年7月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)