世界の人口増加に伴う食糧不足に、たんぱく質の供給源として昆虫が注目されています。たんぱく源として肉や魚が重要ですが、肉や魚を効率良く増やすのは難しく、世界から飢死を減らす仕事をしている国連食糧農業機関(FAO)は、2013年に昆虫食を増やさないと大変なことになるという報告書を出しています。現在、世界中の国が食べやすい昆虫食の開発や生産を活発に行うようになってきています。
昆虫は育てやすいだけではなく、栄養価が高くて食べ物としても優秀です。しかも、環境にやさしいとされています。コオロギと牛を比べると、コオロギの方が育てるのに必要なエサや水がすごく少なくて済むし、異常気象に影響があると言われる温暖化ガスの排出量が圧倒的に少ないとされています。世界では色々な種類の昆虫を伝統食として食べていて、そのうち半分ぐらいは甲虫類やイモムシの仲間です。最近はコオロギを中心としたバッタの優秀さが分かってきて、世界各地で養殖が増えています。
食べ物は文化の影響が大きく、日本でもイナゴ、ハチの子、カイコのサナギなどを昔から食べてきた地域もあります。現在、日本で生産が増えている昆虫食の多くは、コオロギを小麦粉みたいに細かい粉末にして使っています。パンや煎餅、チョコレートに混ぜるなどして様々な味の加工食品を作っています。
(2022年8月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)