各国の男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数は、日本が主要7カ国(G7)で突出して低くなっています。さまざまな分野で女性の社会進出が遅れていますが、特に政治分野に限れば147位と世界最低水準に沈んでいます。衆議院の女性議員比率は10%に満たない状況で、町村議会にいたっては、いまだ3割が女性議員ゼロです。男女平等が憲法に謳われ、女性は人口全体で約半数を占めるにもかかわらず、日本では女性の政治家が著しく少なく、政府は女性活躍社会の実現を掲げていますが、政治が示す女性活躍社会の方針自体に、女性の視点がほとんど含まれていなければ、実現したところで意味をなしません。
現在女性の政治参加が進んでいる欧米諸国でも、40年前までの状況はさして日本と変わらない状況でした。1980年時点では、スウェーデン、西ドイツ以外の国は5%未満であり、日本は最低でありますが、英米仏および韓国と大差がありませんでした。しかしその後、英米独仏で女性議員の数が着実に増加したのに対して、日本は増加のペースが遅く、2010年以降は漸減または停滞状況に陥ってしまっています。今や日本の女性議員比率は、先進諸国に大きく水をあけられており、2000年以降は韓国にも劣っています。
この要因として、これら諸国がクオータ制(割当制)を導入してきたことが指摘できます。クオータ制とは、議会における男女間格差を是正するため、女性に一定比率の議席を割り当てる制度のことです。アメリカ以外の5カ国はこの制度を導入して、女性議員を増やしてきました。現在クオータ制を採用している国は、実に118カ国に上っています。世界と日本の差異は、間違いなくこの制度の有無が影響しています。
女性の社会・政治進出を促進するには、出産や育児に対する支援が不可欠ですが、この面でも日本の取り組みは立ち遅れています。男女平等という理念だけは一応語るものの、その具現化には全く真摯に取り組まず、インフォーマルな女性差別意識を払拭する努力を怠ってきた結果です。日本では、女性の社会・政治進出の問題は、周辺的な政治テーマと考えられがちで、歴代政権も本気で取り組んできませんでした。しかし、その結果非婚化や少子化が進み、わが国の存立や安全保障さえ揺るがしかねない事態に至っています。現状を直視すれば、この問題が政治的立場やイデオロギーを超えて取り組むべき最重要課題であることは明らかです。
(Wedge vol.34 No.8 2022)
(吉村 やすのり)