日本の企業は、長年人材育成ではOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に軸足を置いてきました。実際の仕事をしながら、先輩が若手に技術や知識を教える方法です。一人前になるまでには時間がかかり、日本型雇用の特徴である長期雇用が前提となります。
1990年代頃までは、OJTが製造業を中心とした日本企業の強みでした。しかし、近年はデジタル技術の進展などに伴い、仕事の中身ややり方の変化が速くなっています。最近では、OJTではなく、従来の仕事から離れて新しい技能を身につけるリスキリング(学び直し)の重要性が高まっています。
日本企業がOJT以外に従業員の能力開発にかける費用は、海外に比べて少なく、2018年版の労働経済の分析によれば、国内総生産(GDP)の0.10%にとどまり、米国の2.08%、ドイツの1.20%などを大幅に下回っています。
わが国の人材競争ランキングも年々低下しており、政府もリスキリング対策に本腰を入れています。今や、モノからコトへと進む時代です。付加価値の源泉は、創意工夫や新しいアイデアを生み出す人的資本、人です。2024年度までに計約4千億円の予算を投入し、企業への助成金などにあて、100万人規模の働き手の技能向上などを後押しするとしています。
(2022年8月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)