性別変更前後における親子関係

女性に性別変更した元男性が、自分の凍結精子で女性パートナーとの間にもうけた女児2人を子どもとして認知できるかどうかが争われた訴訟の控訴審において、東京高裁は、性別変更前に生まれた4歳の長女の認知を認めましたが、変更後に生まれた2歳の次女の認知を認めない判決を言い渡しました。
40歳代の元男性は、性同一性障害で性別適合手術を受け、2018年11月に戸籍上の性別を女性に変更しました。元男性のパートナーである30歳代女性は、手術前に保存した元男性の凍結精子を使い、性別変更前の2018年夏に長女を、変更後の2020年に次女を出産しました。
凍結精子を提供した男性が、生殖補助医療で生まれた子どもを認知できるかどうかを定めた民法の規定はありませんが、こうしたケースで親子関係を否定する理由もないとしています。生物学的な親子関係があり、戸籍上も男性だった当時に生まれた長女については認知できるとして、親子関係を認めました。しかし、次女については、元男性の性別が出生時に変わっていたことから、生物学的な親子関係があっても、法律上は父としては認められないと判断しています。
家族関係を規定する法律は、強い法的安定性が求められ、明確な基準で決めるべきです。法律上の性別が男女いずれの時に生まれた子どもかを厳密に適用した結果、姉妹の結論を分けています。しかし、先進国では同性婚を認めるなど、親の性の多様化を社会的に容認する流れにあります。子どもの福祉にとって法的な親との結びつきは重要であり、日本でも時代に即した立法措置を講じていくべきです。

(2022年8月20日 岐阜新聞)
(吉村 やすのり)

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