大学や研究機関に任期付きで雇用されている研究者や非常勤講師が、来年3月末までに大量に雇い止めされる可能性が指摘されています。無期雇用契約に転換できる権利が発生する勤続10年を迎える人が多く、大学などが契約を更新しない恐れが出てきています。該当者は、国立大学だけで3,000人以上にのぼっています。
2013年4月施行の改正労働契約法では、有期雇用の乱用を防ぐため、通算5年を超えて働いた労働者が、定年まで勤められる無期雇用への転換を申し入れた場合、雇用主は拒否できないと定めています。研究者や大学の非常勤講師については、5年以上継続しなければ成果が出ないものもあるなどとして、別の法律で通算期間は10年とされています。
国立大学が人件費などに充てる運営費交付金は、2004年の国立大学法人化以降、削減が続いています。2022年度は1兆786億円と2004年度から1割以上減っています。政府は期限付きの研究費である競争的資金を増やしています。研究者の競争は活発になりましたが、腰を据えた研究はやりづらくなり、学生の博士離れにもつながっています。優秀な研究者でも、通算10年の勤務期間が終われば、雇い止めされうることが問題となっています。少子化で大学経営は厳しさを増しており、各大学は人件費抑制に躍起となっています。
(2022年8月20日 読売新聞)
(吉村 やすのり)