国立女性教育会館が2019年に入社5年目の男女を対象に実施した意識調査によれば、管理職を目指したいが、男性は46.6%にのぼったのに対し、女性では15.2%にとどまっています。目指したくない理由は、男性は責任が重くなるからが56.8%で最多でしたが、女性で最も多かったのは、仕事と家庭の両立が困難になるからで69.3%でした。
男女とも、1年目よりも5年目の方が、リーダーには男性の方が向いているという見方を否定する傾向が強まっていますが、全ての調査に回答した女性の管理職志向を追うと、1年目の60.0%から5年目は37.6%に下がります。
期待を抱いて入社した社員が、社内の現状を知って幻滅してしまうのは、男女ともにみられる現象ですが、女性の方が顕著です。将来につながる仕事を任せてもらえるかどうかや、上司がきちんと育成しているかどうかも、管理職志向に影響する要因となっています。
これまで女性登用のための取り組みというと、家庭と仕事の両立支援に重きが置かれてきました。管理職志向に男女間格差が大きい現状を踏まえれば、職場側の要因にもっと目を向ける必要があります。少数派ゆえの孤独は、女性管理職に限ったことでもありません。男性社会の組織の中で、女性が発言することは、個人の意思と関係なく差別への加担が繰り返され、それだけで苦痛を感ずることもあります。少数派だからこそ見える問題について、気兼ねなく口にできる心理的安全を組織全体で高めていくことが大切です。
(2022年8月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)