政府は、2024年度にも返済不要な給付型奨学金の世帯年収要件を380万円未満から緩和する調整に入っています。子ども3人以上の多子世帯や理系学生を対象とします。大学や短大などを対象とする奨学金は、返済が必要な貸与型が多くなっています。卒業後に返済に苦しむケースがあり、不安なく利用できる給付型を拡充します。
給付型は年間最大91万円までで、年収によって支給水準が変わる仕組みです。両親と子2人の世帯の場合は、年収380万円未満が対象の目安となります。2022年度予算は2,525億円を計上しています。政府内には年収600万円前後までを対象とする案があります。人への投資の一環として早期実現が急務です。
給付型の対象拡大は、政府の財政負担と引き換えに、大学が入学者を確保しやすくなる面があります。現在も教育体制や経営基盤が一定の水準を満たす大学に限定し、学生の意欲や進学後の学修状況などの条件をつけています。費用対効果を上げるには、対象を優れた教育環境を整える大学に絞るなど基準の厳格化が必要になります。
(2022年8月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)