微粒子によるがん・難病治療

体の細胞が出すエクソソームという微粒子を医薬品として使うエクソソーム療法の開発が盛んになっています。エクソソームは、ウイルス並みの直径50~150ナノメートルの微粒子です。中に遺伝情報となるRNAやたんぱく質が入っており、細胞間の情報伝達を担っています。がんでは転移などに関わっており、がんの早期診断などへの応用が注目を集めています。生体組織の再生を促すエクソソームも見つかり、治療薬に使う発想が生まれました。
順天堂大学らの研究グループは、骨髄由来のエクソソームを肺の難病の治療に使う研究を進めています。東京慈恵会医科大学のグループは、肺の難病である特発性肺線維症に対し、エクソソームを吸入する治療法を検討しています。健康な気道の細胞が放出するエクソソームを投与し、線維化を抑える狙いです。新潟大学らの研究グループは、骨髄や脂肪にある幹細胞の一種が出すエクソソームに注目し、肝硬変の治療を目指しています。
実用化への課題は量産です。細胞の培養液の上ずみを精製して作りますが、大規模化や品質管理が困難です。既に保険外の自由診療でエクソソーム療法を手がけるクリニックがあり、問題視される例もあります。再生医療の規制対象にはなりませんが、安全性や有効性の評価が十分でないとの懸念があります。

(2022年9月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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