プライマリーバランスとは、政府が財政の立て直しの目標に使っている指標で、基礎的財政収支のことを言います。政府は道路をつくったりお年寄りに年金を払ったりと、様々な行政サービスをしています。財政の支出のうち、借金の返済や利払いにあてる分を除いたこうした政策経費を、税金など借金以外の収入でどれだけ賄えているかを示す指標です。日本は収入よりも支出が多く、PBは赤字です。その分、借金が増え続けています。
政府は、3年後の2025年度に黒字にする目標をたてています。今年7月の政府の試算では、うまく経済成長が進めば、2025年度はまだ赤字ですが、2026年度には1.8兆円の黒字になるとしています。試算では、日本の経済成長率が大幅にアップして、企業や個人が払う税金が増えることを前提にしています。しかし、そんなに高い経済成長が実現したことは、過去20年で1度しかありません。
与党では防衛や経済の立て直しなどのために、もっと政府の支出を増やすべきだという声も高まっています。国の借金を減らすよりも大事なことがあるという考え方が横行するようになってきています。新型コロナやロシアのウクライナ侵攻が世界の経済に影を落としており、国が支出を減らせば景気を冷やす可能性があります。また、日本は1千兆円にのぼる借金を抱え、財政は世界最悪の水準で、借金頼みを続けることにもリスクがあります。
(2022年9月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)