厚生労働省の発表した毎月勤労統計調査によれば、物価上昇を考慮した実質賃金は前年同月比1.3%減と4カ月連続マイナスでした。賃金自体は堅調に伸びているにもかかわらず、急速な円安に伴う物価上昇の速度に追い付いていません。1ドル=140円の円安水準が続けば、今年度の家計負担は前年度比7万8千円程度増えると試算されています。
1人当たりの現金給与総額は1.8%増の37万7,809円で、7カ月連続のプラスでした。新型コロナウイルス禍からの回復を受け賃金は伸びています。しかし、インフレのペースが賃上げを上回っています。実質賃金算出の指標となる生活実感に近い物価上昇率は3.1%でと上がっています。所得に占める生活必需品への支出が大きい低所得層ほど、負担感が重くなっています。
実質賃金の目減りに歯止めがかからず、家計の購買力が低下すれば、GDPの過半数を占める個人消費が減速して、景気の下振れ圧力が強まります。
(2022年9月7日 産経新聞)
(吉村 やすのり)