政府は、全世代型社会保障構築会議を開き、子育て世代への支援拡充とともに、持続的な社会保障制度を実現するため、所得の高い高齢者などへの負担増の議論に着手します。現役世代に偏る負担を見直し制度の安定性を高める狙いです。
焦点の一つが高齢者の負担増です。日本の社会保障制度の仕組み上、給付は高齢者、負担は現役世代に偏りがちです。75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で必要な医療費は、窓口負担を除けば現役世代からの支援金で約4割を賄っています。75歳以上の後期高齢者の保険料の上限額引き上げが必要となります。介護費用の2割を負担する人の対象拡大や、ケアプランの有料化などが課題となります。
子育て支援の拡充は必須です。政府は子ども関連予算の倍増を目指すとしていますが、どういった支援をどの程度積み増すかといった具体策は依然として見えています。育児休業給付の対象を非正規労働者にも広げることも必要です。企業の負担増につながり、反発が出ると思われますが、企業の内部留保が500兆円に及ぶことを考えれば可能です。
子育て世代の負担を解消するための出産育児一時金の引き上げは、少子化対策の一丁目一番地です。現役世代の負担をいかに減らすかが重要であり、社会保障制度の抜本的見直しは待ったなしです。
(2022年9月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)