国立成育医療研究センターによれば、厚生労働省の国民生活基礎調査の解析によれば、1歳未満の子どもを育てる世帯では、11.0%の父親に精神的な不調のリスクがあると評価され、母親の10.8%とほぼ同程度の結果でした。さらに父親と母親の両方にリスクがあると判定された世帯も3.4%にのぼっています。
夫婦が同時に調子が悪くなる一つの要因に、父親の長時間労働があります。海外に比べ、通勤を含む仕事の時間が長いために、育児にあてる時間を捻出できないという事情もあります。子育て支援は、家庭全体を支えていく広い視点が必要です。リモートワークや定時退社など、働き方改革をし、親が子どもと過ごす時間を増やすことも支援につながります。
うつに加え、注目されているのが父親のボンディング障害です。ボンディング障害は、子どもに愛おしい、守ってあげたいという愛情を抱けず、無関心になったり、怒りを向けたりする状態です。生後1カ月の子どもを持つ父親の約1割弱の人は、そのリスクが高いと判定されており、母親と同等以上の割合です。産後うつも要因になっています。
育休を利用すると、ボンディング障害が逆に強まるという関連性がみられています。子育てに対する知識不足による自信のなさや、育休中の孤独感、育休取得の罪悪感などが背景にあります。子どもと長時間過ごすという経験は、父親にとって、知識や経験がなく難しい場合があります。育休前に参加できる父親のための育児教室などが必要と思われます。
(2022年9月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)