セーフティーネットとしての子ども食堂

新型コロナウイルス禍で、無料や低価格で食事を提供する子ども食堂が増えています。誕生から10年が経過し、地域の人の善意に支えられ、子どもたちの困窮を防ぐセーフティーネットとして進化を続けています。子ども食堂は、企業や農家などに資金や食材を寄付してもらい、地域の有志がボランティアで食事を提供することが多くなっています。
全国の子ども食堂を支援するNPO法人である全国こども食堂支援センター・むすびえによれば、コロナ禍前の2019年は約3,700か所でしたが、2021年には6,000か所を超えています。職を失うなど経済的に困窮する家庭が増えたことが背景にあります。最近は感染対策で、一緒に食べる食堂形式から、弁当の配布や食材の宅配に切り替える動きも広がっています。
子ども食堂が誕生した2010年代前半は、単身世帯の増加に伴う地域のつながりの希薄さが注目され始めた時期と重なります。孤独死や、独りでの食事、孤食が広く知られるようになり、子ども食堂は、つながりの重要性を痛感することにより増えてきました。2018年の西日本豪雨など大きな災害が起きると、地域が復興していく過程で子ども食堂が生まれ、数が増えていきました。2020年に新型コロナの感染拡大が深刻になっていくと、子ども食堂と行政との連携が一気に進みました。
行政が子ども食堂の開催場所を広報したり、予算を投入したりするといった動きも広がっています。厚生労働省は子ども食堂を支援する団体に助成金を出し、農林水産省も政府備蓄米の提供を始めています。個々で活動していた食堂がネットワークを構築し、寄付の受け付けを一括して行い、食材を融通しあうなど、体制強化も進んでいます。
困っている人を、地域の人が自分のできる範囲で助けるのが子ども食堂です。参加者に条件はなく、何ら申請をしなくても利用できます。この間口の広さや緩やかさが、福祉の安全網からこぼれる人を救う力となっています。また、子ども食堂は、世代を超えた住民同士が協力し合う地域の交流拠点としての側面が注目されています。

(2022年10月10日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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