厚生労働省の人口動態統計によれば、1~3月の死亡数は約42万人で、前年より約3万8千人(10%)増えています。死因別では、最も増加したのは心不全など循環器系の疾患で約1万人(10%)増えており、老衰も約8千人(21%)増えています。コロナによる死亡は約1万2千人で、前年より約6千人増えました。増加分の8割以上はコロナ以外の死因でした。年代別では、前年同期より80代が約1万5千人(11%)、90代以上が約1万7千人(15%)増えています。高齢化で死亡数は年数%増えていますが、第6波の1~3月は10%以上増えていました。
減少傾向だった循環器系の疾患による死亡は、2021年以降は増加傾向に転じています。1~3月では前年同期より約1万人増加し、内訳でみると心不全や不整脈などの死亡が半数を占めています。高齢者を中心に増加しており、ワクチンの副作用の一つとされる心筋症は、若年層を含めて死亡数の増加には影響していませんでした。
自宅で死亡した人は、2020年に21万6千人、2021年は約24万8千人で、いずれも前年より3万人程度増加しています。コロナ禍前は数千人の増加傾向でしたが、大幅に増えました。コロナ禍では入院すると家族と面会できなくなってしまいます。入院中の患者が、家族と一緒に自宅で最期を迎えたいと退院したり、健康状態が悪化しても入院しなかったりする高齢者が増えていました。老人ホームでの死亡数も、2021年は前年より約1万8千人増の約14万4千人でした。1~3月の第6波では、医療が逼迫して入院できない高齢者が多かったことが関係しています。
2020年は、コロナ対策を強化した余波で肺炎やインフルエンザなど感染症の死亡が急減し、コロナ禍にもかかわらず年間死亡数は11年ぶりに減少しました。2021年は増加して平均寿命も減少しましたが、2年間でみると、日本は平年を大きく上回る超過死亡はありませんでした。海外では、世界全体で1,490万人の超過死亡が生じており、同期間のコロナ死亡報告(約540万人)の3倍に達しています。WHOの推計でも、日本は2年間で超過死亡が生じるどころか、平年より死亡数が約2万人少なくなっています。
(2022年10月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)