国民年金の見直し

厚生労働省は、国民年金(基礎年金)の保険料を支払う期間について、現在の40年間(20歳以上60歳未満)から5年延長し、64歳までの45年間とする方向で本格的な検討に入っています。想定以上のスピードで少子化が進んでおり、将来受け取る年金の水準が下がるのを防ぐ狙いがあります。
国民年金の保険料は、現在月1万6,590円です。納付期間が5年延びると、国民年金だけに入る自営業者や短時間労働者、無職の人などは、保険料負担が増えることになります。しかしその分、将来受け取る年金額も増加することになります。厚生年金は、原則70歳未満であれば保険料を支払うため、60歳以降も働く会社員などは今回の見直しによって追加の負担は生じません。
延長を検討する背景の一つに、基礎年金の水準が今後大きく低下する課題があります。2019年に年金の将来の見通しを示す財政検証をした結果、厚生年金の水準は、約30年後に2019年度より約2割低くなる一方、基礎年金では約3割減まで落ち込むことがわかっています。その後もコロナ禍で少子化がさらに加速しており、受け取る年金の水準はさらに下がる恐れがあります。
2022年の出生数は、上半期で40万人を割り、年間で80万人を下回る勢いです。年金はその時々の現役世代が高齢者を支える仕組みで、支え手の減少は年金財政に大きく影響します。少子高齢化で医療や介護でも負担増は避けられず、年金保険料の負担増がどこまで受け入れられるかは見通せません。受け取る年金額を増やすためとはいえ、保険料負担の増加には反発も予想されます。45年化で基礎年金が増えると、基礎年金の半分を賄う国庫負担も増えてしまいます。

 

(2022年10月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。