生後まもなく閉じるはずの血管が閉じない動脈管開存症は、とくに2,500グラム未満の低出生体重児で起こりやすい心疾患で、薬でも治らない場合は手術が必要となります。2020年、低出生体重児でも使えるカテーテル治療の公的医療保険の適用が始まっています。
動脈管は太さが1~5㎜程度と小さいのですが、胎児期には大切な血管の一つです。生まれてから1~2日で自然に閉じます。動脈管が開いたままだと、心臓から全身に送られる血液が少なくなり、尿量の減少、消化管の壊死、呼吸障害などにつながります。治療を必要とする動脈管開存症のある赤ちゃんは、1,500g未満の子では約30%、1,000g未満の超低出生体重児では約50%とされています。
未熟児が原因の動脈管開存症だと薬が効くことが多く、年間約2千~3千人が静脈の点滴で治っています。薬で治らない場合、以前は開胸などの外科手術が必要でしたが、2019年に体重が2,500g以上の乳児でもカテーテルが使えるようになりました。2020年には、700g以上の超低出生体重児でも使える動脈管開存症のカテーテル機器が発売されています。米国の3年間の治療成績によれば、成功率は95%です。
胸を開ける手術をしなくても済む患者が増え、患者の体への負担も軽減されます。しかし、まだ全国で22カ所の医療機関でしかできず、地域性に偏りがあります。まずは2,000g台の新生児で経験を重ね、次に1,000g台、1,000g未満と段階を踏むことも学会の基準で決められています。
(2022年11月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)