脳死となった人からの臓器提供を可能にする臓器移植法が1997年に施行され、今年10月で25年が経ちました。2021年までの直近10年の脳死下での臓器提供数は、年平均約64件に過ぎません。法施行直後に比べれば大幅に増加しましたが、世界的な水準とは大きな開きがあります。
世界的にみると、日本の実績は極めて低調です。臓器提供・移植に関する国際レジストリー(IRODaT)によれば、心停止後を含む2019年の日本の提供件数は、人口100万人あたりで0.99です。米国約37、英国約25、ドイツ約11に比べると大きな開きがあります。同じ東アジア圏でも韓国8.68、中国4.43に比べても低率です。
日本臓器移植ネットワークによれば、国内で移植を希望し登録している人は、計約1万6千人です。脳死下で97件提供があり、480件の移植が行われた2019年でも、希望者の2~3%しか移植を受けられていません。脳死下の提供は増えましたが、心停止後の臓器提供の件数は減り続けています。双方を合わせた総数は、この25年間で100件前後の横ばいのままです。
内閣府の世論調査によれば、約4割が自分が脳死と判定された場合、提供したいもしくはどちらかといえば提供したいと回答しているにもかかわらず、意思表示をしている人は計1割ほどしかいません。また、医療機関側の体制の問題もあります。高度な医療を行う大学病院や救命救急センターなどで、実際に提供ができる体制が整っているのは半数も満たないとされています。提供の可能性があるのに、施設の体制が未整備のため、提供に至らなかった事例が多く見られます。
(2022年12月14日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)