大和総研の調査によれば、主に正社員として働く女性の集団で出産率が上昇していることが分かりました。一方、夫の扶養に入っている女性では低下しており、在宅育児への支援の薄さという課題もみられます。
2001年度の粗出生率は、中小企業主体の協会けんぽと、大企業などの健康保険組合に加入する女性のうち、被保険者本人のグループでは0.03台となり、被扶養者の0.08~0.09台と比べて3分の1程度にとどまっていました。この時点では、働く女性は出産しづらく、仕事をとるか子どもをとるかの二者択一を迫られる状況でした。2010年度から2020年度にかけては、正社員で0.04台へと上昇が目立つ一方、被扶養者は0.06台へと低下し、その差は縮まっています。
より多くの若いカップルが、育児休業や保育所を利用して子育てをしながら、正社員として共働きできるようになっています。特に、妻が正社員として働き続けられることが、世帯所得を増やし、子どもを持つ意欲を高めたと思われます。一方、被扶養者の出生率の低下は、3歳未満の在宅育児への支援が手薄とも言えます。
公務員が加入する共済組合で正規職員の粗出生率が、2001年度の約0.05から2019年度の約0.07に上昇し、民間の被扶養者の0.06台を上回っています。公務員並みの仕事と育児の両立や、在宅育児を支援するなどの政策で、出生数が増加する余地は約31万人と試算されています。これは2020年の実際の出生数84万人の37%に相当します。
(2022年12月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)