ドイツの出生率の上昇から学ぶ

ドイツは、1990年代には出生率が一時1.2台まで低下し、隣国のフランスや北欧とは大きく差が付きました。しかし、2015年以降は1.5台に回復し、2021年は1.58に達しています。男=仕事、女=家庭とみなす伝統が根強いドイツも、夫婦が柔軟な働き方を選べる仕組みが出生率回復をもたらしています。
女性を家庭に縛る伝統的な価値観を修正するには、男性が育児休暇を取りやすくする環境づくりが欠かせません。2007年に導入した両親手当は、育児休業給付として最大14カ月分を受け取れますが、そのうち2カ月分はもう片方の親が取らなければ権利が無くなってしまいます。これが男性の育児休暇取得を飛躍的に上げました。母親が12カ月間、父親が2カ月間取る夫婦が多くなっています。
国、地域、企業が一体となって、父親の育児休業取得と母親の早期復職を同時に促進しています。第2次メルケル政権下の2013年に1歳以上の子どもに保育を受ける権利を保障しています。3歳までは親元という社会通念や、親の仕事と育児の関わり方をパラダイムシフトさせました。
少子化対策に特効薬はありません。必要なのは、長い時間をかけてでも社会に根深い慣習や考え方、染みついた働き方の見直しを積み重ねることが大切です。日本は出生数が減り続ければ、30年後には出生数が年50万人まで減ってしまいます。長期展望を持って取り組まなければなりません。

(2022年12月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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