日本人の2人に1人が生涯に一度はがんになるといわれる時代です。がんの診断から1~2週間程度は、がんであることを否定したり、現実を受け入れようとしたりする不安定な状態が続きます。この否認と受容の間で揺れ動きながらも、次第に適応して、現状を知ろうとしたり、治療に取り組もうとしたりするようになっていきます。しかし、適応の段階に至るのが難しく、気分が沈んだまま何もする気がしない状態が続いてしまう人もいます。
治療を受ける上では、主治医との積極的なコミュニケーションが重要です。医師に確認しておきたいことには、診断の経緯や病状、起こってくる症状、治療の選択肢などが挙げられます。国立がん研究センターでは、医師との面談時によくある質問を網羅的にまとめた冊子を作成しています。
ソーシャルサポートを構築しておくと、いざという時の助けになります。ソーシャルサポートとは、家族や友人、職場の同僚、近隣の人などと助け合う協力体制のことで、情緒・情報・手段の3つの種類があります。各種類で2~3人の支援が得られると理想的です。ソーシャルサポートがある人は無い人よりも病気になりにくく、ソーシャルサポートが多い人ほど、がんになった場合の経過が良好になるという報告もあります。がんになったら家族には何をしてほしいか遠慮なく伝え、家族も何ができるか聞くことが大切です。
同じがんを経験した人達と体験や思いを分かち合うピアサポートなどの活動に参加してみることでも、気持ちの回復につながります。現在は医療の進歩によって克服できるがんが増えてきています。がんに直面した時には、前向きに治療に取り組むためにも、心のケアが大切です。
(2022年12月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)