年収の壁対策の必要性

年収の壁とは、パートの主婦(主夫)ら配偶者の社会保険上の扶養に入りながら働く人が、一定の年収を超える手取り額に影響が出る問題や金額を示します。主な壁には所得税が発生する103万円、一定条件を満たすと厚生年金や健康保険に加入するための社会保険料が発生する106万円、配偶者控除を外れて自ら社会保険料を払う130万円の壁、配偶者特別控除が減り始める150万円があります。特に影響が大きいのが、手取りが急に減る106万円と130万円の壁です。

130万円の壁は、配偶者に扶養されている人の年収が130万円を超えると、扶養から外れる基準です。この基準以上の年収があると、自ら医療や年金の保険料を納めないといけません。パートなどで働く人の年収が106万円を超すと、健康保険や厚生年金に入ることになる106万円の壁もあります。配偶者の扶養に入っていた人は、新たに保険料負担が生じます。
パート従業員の時給は最低賃金の引き上げで増加しているものの、労働時間は減少傾向にあります。この背景には壁を意識した働き方があるとみられ、人手不足の一因ともされています。こうした負担を避けるため、パートとして働く人がわざと勤務時間を短くするケースが多く、女性の就労を阻害する要因とされています。
壁をどう解消していくかは簡単ではありません。厚生労働省は保障が手厚い社会保険の適用をさらに拡大することで、壁を意識せずに長く働けるように促しています。しかし、保険料負担を折半する企業の反発も予想されます。パートの人達にとっても、将来は厚生年金を受け取れるメリットがあるものの、今の負担増への理解がどこまで得られるのか疑問です。様々な壁に対する調整が必要になり、課題は山積しており容易ではありませんが、就労促進のためには避けて通ることができない道です。

(2023年2月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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