がん早期発見の必要性

日本対がん協会によれば、2020年に自治体が実施したがん検診の受診者はコロナ禍前より約3割減少、2021年も1割減となっています。その結果、多くのがん種で検診発見例が減少し、検診以外で見つかる例が増加しています。また早期がんが減っていることも判明しています。
検診以外で発見されるがんは、症状が出てから医療機関を受診して見つかるため、病状が進んでいることが多くなります。検診控えで早期がんが減る一方で、今後は進行がんが増えてくる可能性も危惧されています。検診で見つかる大腸がんの約6割は早期がんですが、血便などの症状があって医療機関で発見される場合は約8割が進行がんという報告もあります。
がんは初期には症状がほとんどなく、症状が出てくるころには病状が進んでいます。早期がんを見つけるには、定期的ながん検診が欠かせません。早期がんは治る確率が高く、ステージごとの5年生存率は、大腸がんの場合0期だと98%、1期なら95%です。しかし、ステージが進むにつれて生存率は下がり、遠隔転移のある4期になると2割を切ってしまいます。男性の死亡数1位の肺がんも同様で、0期が96%、1期が84%ですが、4期では8%に低下します。
早期だと体への負担が軽い治療を選択できます。大腸がんや胃がんなどでは、内視鏡でがんを切除する内視鏡的粘膜下層剝離術を受けられます。開腹手術に比べて切除範囲が格段に小さく、治療時間も入院期間も短くてすみます。他のがんでも、早期なら部分切除で臓器や機能を残すことが可能です。

(2023年2月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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