厚生労働省によると、2020年の外科に従事する医師数は2万7,946人です。過酷な労働環境から、男女問わず若手が回避する傾向が強まり、30~40代の比率は20年前の55%から46%に減少しています。病院勤務の外科に従事する女性医師は、1割に満たない状況です。女性医師が増えれば、外科医の高齢化や不足解消の一助になります。長時間にわたる手術や週末深夜を問わない呼び出しなどの過酷な労働環境が要因となり、女性外科医師のなり手が増えません。家事や育児との両立可能な働き方とはほど遠く、特に女性は外科医としてのキャリアを築きにくい状況にあります。
しかし女性には、キャリア形成に重要な時期である20代後半から30代前半と、出産時期が重なることも重荷となっています。日本外科学会の調査によれば、女性外科医の第1子出産の平均年齢は33.1歳です。医師免許取得後、様々な科で研修する初期研修医を終えるのが早くても26歳です。一般的な外科の知識や技術を取得した後に、さらに専門性の高い資格を取得する必要があります。
厚生労働省によれば、2020年末時点の病院勤務の外科の女性比率は7.8%にすぎません。諸外国と比べても日本の女性外科医は少なく、カナダや英米は2~3割を女性が占めています。日本では、2024年度から残業上限を原則として年960時間にする医師の働き方改革が始まります。これまでの主治医制から1人の患者を複数の医師がみるチーム制に移行するなど、想定される変化を患者に丁寧に説明することが大切となります。より多様な外科医が働ける環境づくりが欠かせません。
(2023年2月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)