戦後長く続いてきた日本の教員採用制度は今曲がり角に来ています。教員不足が深刻化する中、自治体が採用や育成の見直しに動き出しています。教員採用試験を大学3年から受験可能にする、試験を経ない選考ルートを設けるなど思い切った変更が目立っています。
最近では、大学の学部や大学院を卒業したての新卒者が新人教員に占める割合が高まっています。20年前の2002年度採用では、小学校の新人で新卒者は25.8%しかいませんでした。大半は既卒者で、その中には非正規採用の教員として働きながら教員採用試験の合格を目指す人が多く含まれていました。教員の大量採用が続く中、既卒の志望者は正式作用が進んで減り、教職未経験の新卒者の割合が上昇しています。小学校の2022年度採用では、50.7%と半数を超えています。
文部科学省によれば、ピークの2000年度採用で12.5倍だった公立小学校の採用倍率は、2022年度採用では2.5倍まで低下しています。18県市で2倍を下回り、うち4県は1倍台前半です。合格ラインの低下で採用試験では、新人教員の質を保てなくなっています。採用倍率は、教員の需給や雇用市場全体の動向に左右されます。そうした不安定なものに頼らない、教員の質の確保の仕組みを構想する時期に来ているように思えます。
平均年齢の低下で出産・育児などによるキャリアの中断も多くなります。社会人の中途採用なども増えると思われます。しかし現行の教員の育成制度は、初職で採用され長く勤務する働き方を前提にしており、能力向上がうまく進まなくなる恐れもあります。教員に求められる能力は高度化しています。イノベーションの活発化には、協働や対話の中で個性や長所を育む教育への転換が必要です。より多様な人材が関わる必要もあります。教員の質、量、多様性の3つを確保する難題に挑まなくてはなりません。
(2023年3月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)