デマンド交通の伸び悩み

予約して乗り合うデマンド交通の導入機運は高まっているのに、既存事業者の反発で本格運行に移れなかったり、制約があったりして伸び悩んでいます。新型コロナウイルス禍で、利用者の減った公共交通は再編を迫られています。バスでもタクシーでもない新たな住民の足の定着には、利害関係を乗り越える自治体の戦略と調整力が欠かせません。
不採算路線や廃止路線の代替として、予約がある時だけ走るデマンド交通に注目が集まりました。AIで効率配車するシステムを提供する企業が増え、大都市にも広がりました。導入市町村は2020年度時点で573に達しましたが、国計画の700を下回っています。運行地域や営業時間が限られがちなことが大きな障壁となっています。
2㎞圏内の近距離に絞り、深夜・早朝は運行しません。運行形態を決める制約要因として、運航コスト・採算性が35.2%と並んで、公共交通事業者の状況が32.4%が挙げられます。予約が重なれば、迎えや到着の時間が読みにくくなります。都内での乗り合い率は約2割で、地方ではさらに低く、高度なAI配車が必要な場面は少なく、システム負担高くつくことがあります。
バスが幹線を担って人流を束ね、細部をカバーするデマンド交通と接続するなど分担が大切となります。新たな需要を生み出して既存業者と共存している地域は多く、不便地域に追いやるなど誤ったすみ分けでは上手くいきません。

(2023年3月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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