加齢に伴うもの忘れは誰にでも起きます。さらに年をとるほど認知症になりやすく、日本では65歳以上の認知症の人は約600万人と推計されています。もの忘れや認知症は高齢者にごく普通のことという理解を深める必要があります。
もの忘れの原因を判断する基準の一つが、日常生活に支障があるかどうかです。家に帰る道が分からない、洋服を着られないなど、それまで見られなかった混乱が生じる場合は、認知症と思われます。加齢によるもの忘れは、日常生活に支障が出ないことが多いとされています。最近したことをどの程度覚えているかも、判断の基準になります。認知症だと体験したことを丸ごと忘れてしまうため、例えば朝食をとったこと自体を忘れます。加齢によるもの忘れは、朝食をとったことは覚えていますが、何を食べたかを思い出せないとった例がよく見られます。
もの忘れ外来はメモリークリニックとも呼ばれ、医療機関で設置が広がっています。忘れっぽくなった、物をよくなくすことが多いといった人を対象に、原因が病気か加齢かを診断する窓口の機能を担っています。
(2023年3月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)