造血幹細胞は、さい帯血や骨髄の中に存在し、赤血球や白血球などの血液細胞に変わります。造血幹細胞は、正常な血液細胞がつくれない白血病患者らの移植治療に不可欠ですが、さい帯血に含まれる量は少なく、骨髄の移植はドナーの負担が大きいのが課題でした。筑波大学の研究チームは、血液細胞の元となる造血幹細胞を体外で効率的に培養することに成功しています。
研究グループは、さい帯血から集めた造血幹細胞を人工培養する方法を開発しました。増殖を促すと考えられてきた、体内にもある血清アルブミンとサイトカインと呼ばれるたんぱく質の代わりに、同じ働きをもつ複数の化合物の培地の作製をしました。この培地で造血幹細胞を培養したところ、1か月間、安定的に増え続けたとされています。チームは2019年、マウスの造血幹細胞の体外培養に成功していますが、人で効率良く増やすことができたのは今回が初めてです。
(2023年3月22日 読売新聞)
(吉村 やすのり)