厚生労働省研究班の推計によれば、認知症の人は2020年に約600万人、2025年に65歳以上の約5人に1人に相当する約700万人に増えます。さらに2040年には約800万人、2060年には約850万人に達するとされています。
一方、家族やケア従事者などの支え手は今後足りなくなります。厚生労働省が公表した2022年の出生数は、79万9,728人で過去最少を更新し、国の想定以上に早いペースで80万人を割り込んでいます。2022年版の厚生労働省白書では、医療や介護など福祉関連の人材が、2040年に96万人不足すると推計しています。担い手が足りなくなれば、家族や地域住民など身近な人の手助けの重要性はさらに増してきます。
認知症の人への理解を深めるため、仮想現実(VR)の技術を使った症状の疑似体験を促す取り組みが広がっています。VR体験の取り組みの背景には、介助者と認知症の人の間にある認識のズレの問題があります。この体験の狙いは、認知症の人と接する身近な人たちの意識の変革です。将来に備え、当事者と周囲の人たちの間にある誤解を減らし、適切なケアをしやすい環境の整備が欠かせません。
(2023年4月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)